ことのは塾のことのはブログ

ことばの専門塾を主宰する在野の言語学者が身近な言葉の不思議について徒然なるままに好き勝手語ります。

詐欺メールのおかしな日本語 パート2

 年の瀬となりましたが、皆さまはいかがお過ごしですか?私は今週いっぱいで大学の授業も最終週となり、年明けに期末試験と成績評価を残すのみとなりました。塾に関して言えば、明後日から「冬期集中講座」と題して一般の塾・予備校で言うところの冬期講習が始まります。小さな個人塾ですので特に慌ただしく準備することもないのですが、センター試験前ともあっていつも冬は独特の緊張感があります。

 

 さて、今回は久々にネタが少したまったので、「詐欺メールのおかしな日本語」の第二弾をやりたいと思います。今回は全て「アマゾン」を騙るメールです。まいどまいどよく送ってくるなあと感心しますが、笑ってしまうような日本語で来ることがほとんどですので騙されません。こんなメールを見ても慌ててクリックなどなさらないようお願いします!なお、詐欺メール本文は青字で表記し、その本文中の下線などは断りのない限り私の施したものです。

 

1. Amazon その1

Amazonお客様 
Amazonプライムをご利用いただきありがとうございます。お客様のAmazonプライム会員資格は、2019/10/30に更新を迎えます。お調べしたところ、回避のお支払いに使用できる有効なクレジットカードがアカウントに登録されていません。クレジットカード情報の更新、新しいクレジットカードの追加については、以下の手順をご確認ください。

これは比較的「まともな日本語」で書かれていますので、油断すると引っかかるかもしれません。ただし次の2点(下線部参照)で怪しさに気づきます。

① まず、Amazonを騙る詐欺メールの特徴は必ず宛名が「Amazonお客様」です。本物であれば個人名できちんと届きますので、すぐに怪しいと分かります。そして私はAmazonプライムを会員登録したことは一度もありません。

②「回避のお支払い」って何でしょう?支払わないと何かが衝突するのでしょうか(笑)そう、これは「会費」でしょう。しかし、個人のやり取りならこういう誤植・打ち間違えや変換ミスもあるかもしれませんが、通常大きな企業からのこうしたメールでこのレベルの変換ミスはあり得ません。

こうして、偽サイトへ誘導し、クレジットカードの情報を得ようとする「フィッシング詐欺」の一種ですね。

 

2.Amazon その2

Amazonプライムをご利用頂きありがとうございます。

サービスが現在中断されたという通知です。

このサスペンションの詳細は次のとおりです。

停止理由:アカウントに確認が必要

今すぐ確認する:ログインアカウント(注:実際にはここにリンク)

重要:

7日以内にサービスを更新しないと、サービスは永遠に削除されます。

すべてのアカウントは、データの機密性を確保するために完全に削去されます

その後、データを回復することはえきません

いきなり「サービスが現在中断されたという通知です」ときましたね。利用していないのに(笑)さて、①「このサスペンション」って何でしょう??おそらく「一時停止」「中止」の意味の suspension でしょうが、前の文で「中断」と言っているのだから、わざわざ分かりづらいカタカナで言い換える必要はありませんね。

②「サービスは永遠に削除」ってサービスが削除されてもこちらは困りません。だってサービスはそちらが提供するものであってこちらが何かするものではないので。

③「削去」…謎の言葉です。「削除」+「消去」の混成語(「ゴジラ」=「ゴリラ」+「クジラ」みたいなもの)でしょうか(笑)

④出ました「えきません」(笑)何でしょう??「できません」なら分かります。

もうめちゃくちゃです。

 

3.Amazon その3

平素はAmazon.co.jpをご利用いただき、誠にありがとうございます。 
この度は、突然のご連絡にて失礼いたします。
ご配送会社より中国郵便にて09月18日迄に配送予定とメール、配送中となり受取先不明のせいで、配送不可な状態でありました。

期日が過ぎ、受け取らない場合、返送される予定です。 

ご受取先情報をご修正してください

丁寧なごあいさつを頂いて恐縮ですが、下線部①が全く分かりません。「配送中となり受取先不明のせいで、配送不可な状態でありました」って配送中なの?配送不可なの?配送不可なのに次の文で「期日が過ぎ、受け取らない場合」って配送不可なんだから受け取れないじゃん(笑)そして、②の「よく分からない丁寧語」です。「ご受取」に「ご修正してください」です(笑)この波状攻撃には笑います。

 

4.Amazon その4

Amazonをご利用いただきありがとうございますが、
アカウント管理チームは最近Amazonアカウントの異常な操作を検出しました。
アカウントを安全に保ち、盗難などのリスクを防ぐため、
アカウント管理チームによってアカウントが停止されています。
24時間以内にあなたの情報を更新しない場合、
アマゾンアカウントで何ができるか的を絞ってください。

ログインアカウント(注 本物はここにハイパーリンク

なぜこのメールを受け取ったのだろうか?
この電子メールは、定期的なセキュリティチェック中に自動的に送信されました。当社はお客様のアカウント情報に完全に満足しておらず、引き続きサ ービスを継続的にこ利用いただくためにアカウントを更新する必要があります。

 

親切なくらい「怪しい日本語」を使ってくれています。まず、①「ありがとうございますが、…」を見た瞬間に笑ってしまいました。その後も変な日本語なのですが、とりわけおかしいのが②「アマゾンアカウントで何ができるか的を絞ってください」って(笑)知りません。そもそもどんな選択肢があるのか分かりませんので、的を絞ることは不可能です。そして③において「なぜこのメールを受け取ったのだろうか」と急に独白です。知らんわ!己が送ってきたのだろうよ!④は何がおかしいって「お客様のアカウント情報に完全に満足しておらず」と不満を言われてしまいました。顧客がアマゾン(偽物ですが)を満足させないとダメらしいです。

 

5.Amazon その5

さて、最後はこれです。その1と同じく「Amazonnお客様」で始まりますのでニセモノ確定です。

 

Amazonお客様 

大変申し訳ございません、あなたのアカウントは閉鎖されます。

お客様のメールアドレスは数回に間違いパスワードでAmazonをログインして試しましたので、アカウントを安全に保ち、盗難などのリスクを防ぐために、お客様のAmazonIDはロックされました。
ごIDとパスワードを更新してください。

 

 ①「大変申し訳ございません」も「あなたのアカウントは閉鎖されます」も日本語としては「正しい」のですが、この二つを読点(、)で並列させると日本語の書き言葉としてはおかしくなりますね。そしてわけが分からないのは②です。主述の骨格だけ抜き出すと「メールアドレスは試しました」となり、何を試したのか分かりませんし、そもそも主語がメールアドレスなので極めて不自然です。さらに、「数回に間違いパスワードでAmazonをログインして」などは、質の悪い自動翻訳や(仮にこれが人の手による翻訳だとすると)外国人にとって日本語の助詞がいかに難しいものかが分かる好例です。そして取りを飾るのは③「ごID」です(笑)外来語にまで丁寧語の「ご」や「お」を付ける規則は日本語の規範的文法には存在しません。ニセモノ確定です。

 

いかがでしょうか。とりあえず、今回はニセモノAmazonメール特集でしたが、いずれも普通の日本人であれば「??」という日本語だらけ。そして毎度のことですが送信元のアドレスは 「service02@edm2.hg6fds.com」など、おおよそamazonとは無関係の適当な文字配列です。こんなものに引っかからないよう、内容、日本語、アドレスの3つを確認し、いずれかでおかしいものはニセモノだと判断しましょう。しっかし、毎日のように届くのですが、OCNメールには迷惑メールフィルターってないのでしょうか??こういうのがほぼスルーされて届きます…。

また面白いメールが届いたら第3弾をやります。