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ことばの専門塾を主宰する在野の言語学者が身近な言葉の不思議について徒然なるままに好き勝手語ります。

「おこがましい口の利き方するな」のおこがましさ

今日は、最近ネットを騒がせていることについて簡潔に書こうかと思います。

芸人のウーマンラッシュアワー村本大輔氏についてです。

氏は最近、漫才に積極的に時事問題を取り入れたり、ツイッターなどSNSで政治的発言をすることで話題(炎上?)となっています。

まあ、彼の政治的な発言については色々思うこともあるのですが、ここでは彼と高須クリニック院長・高須克弥氏とのやり取りにおける村本氏の言葉について取り上げます。

 

2019年2月25日(まさしく本日)のツイッターで、村本氏は高須氏の「彼は育ててタニマチをやろうとしている僕の意図がわからずネタにして嘲笑して生き残ろうとしている」という自分への批判に対し、「タニマチとか育てるとか、おれにおこがましい口の利き方するな」と返し、炎上しているようです。

 

www.sanspo.com

 

私自身はツイッターを今のところ使っていないので、限られた知識しかありませんが(筆者注 3月に入ってから、ツイッター始めました!)、どうもツイッターというのは文字数が制限されている分(日本語は140字)、言葉が単純化するようです。短い言葉で自分の言いたいことを表現することになりますので、文章能力の高低が如実に表れることになります。村本氏のツイッターをざっと閲覧してみると、他者とのやり取りの際に(特に自分に批判的なツイートに対し)乱暴な物言いになる傾向があるようです。

 

さて、今回は上で引用した「おこがましい口の利き方をするな」というツイートをとりあげます。

 

そもそも「おこがましい」とはどのような意味の言葉でしょうか?辞書的な意味を見ると(『広辞苑 第六版』)、

 

(1)     出過ぎている。さしでがましい。なまいきだ。

         

とあります。これだけでも村本氏が年長者である高須氏へ使用するのに憚れる言葉であることが分かります。年長者に対し「なまいきだ」というわけです。

 

しかしながら、さらに基本的な使い方を間違えていることにも気を付けねばなりません。

 

確かに、「おこがましい」という言葉は、「なまいきだ」という意味で、相手の行動に対して注意を促したり、批判したりするときに使われることがあります。しかし、多くの場合は、謙遜の意味を込めて自分の言動に対して使われます。

 

(2)     自分で言うのもおこがましいのですが、…

(3)     おこがましいお願いをして申し訳ありません。

 

などです。

 

要するに自分のことを「なまいきだ」とすることで相手を立てる「謙譲表現」ということになります。ですので、今回ように、38歳の村本氏が、74歳と明らかに年長者である高須氏に向かって使用すること、それ自体が人生の先輩に対する言動として大変おこがましいことであると言えます。かなり生意気です。

 

どうも、ツイッターであれこれ発言し、炎上する有名人は言葉が乱暴である人が多い気がします。実数を数えたわけではありませんが、堀江貴文氏のツイッターだと「ボケ」「バカ」がやたら出てきます。どこまでも自分中心なのでしょう。いわゆる問題動画などをアップする「バカッター」とたいして変わりません。せっかく自分の意見を不特定多数の人に伝えることのできる便利なツールなのですから、けんか腰ではなく、読む人が不快にならない言葉遣いにするだけで、耳を傾ける人の姿勢が変わるのはもちろん、そもそもアクセスしてくる読者層が変わるのではないかとも思います。

 

私も時々こうして毒を吐きたくなりますが、できるだけ穏やかに、論理的に毒を吐こうと思います。